【裏窓(Rear Window)】
ヒッチコックの作品は小さい頃に『鳥』を見ただけ、
それも、鳥が飛んできて襲ってきて怖かったという印象だけ、
…ってな話を映画好きの人にしていたら、
「『裏窓』見て面白くないと思ったら、ヒッチコックは合わないのかもしれない。でもこれだけはまあ見てよ」というアドバイスをくれました。
案の定、はまりました。
舞台が好きな人にとったら、これはもうこの設定だけでぞくぞくするはず。
この映画の舞台は、主人公ジェフのアパートの一室。以上。
カメラは、ジェフの部屋から外にはほぼ出ていきません。
主人公ジェフは、世界を飛び回るカメラマンですが、事故で骨折し、仕事にも行けずここ1ヶ月以上ずっと自分の家のアパートに車椅子で過ごすのみ。1週間後にギプスが取れるのをただただ待ってる男です。
部屋にやってくるのは、恋人リザとお手伝いのナースと友人くらい。
アパートで暇をもてあましているジェフは、双眼鏡やら望遠レンズやらを使って、窓から向かいの部屋の隣人たちを覗き見するのが日課となります。
向かいにはいろんな人が住んでいて、バレリーナの部屋・作曲家の部屋・新婚夫婦の部屋…などを彼らの窓枠越しに見ることができます。あくまでもジェフが覗き見しているだけなので、声は聞こえません。
物語は、中年夫婦の部屋から奥さんがいなくなり、これは殺人事件では?! とジェフが疑い始めるということで進んでいきます…。
この殺人事件をめぐるストーリーについてはまた観た後に話し合いたいし、
演出の手法的なところでも素人の私が見ても面白いなあと思う部分がたくさんあるんですが、
とにかくこの設定が面白いので、もうそれだけでも十分私は満足でした。
動けない主人公が、向かいのアパートの部屋を覗いてるだけで話が進んでいく。
それがなんだか、いまいろんな映画を観ている自分のように感じてね。
窓枠って映画のスクリーンっぽいし。
その隣人たちも部屋の中で生き生きしているのよ。
おのおのの部屋に生活があって、そのそれぞれの無言劇を見ているような気持ち。
で、恋人リザは当然動けるので、ちょっとその向こう側のアパートに入っていってこっちを見たりするんだけど、なんかそれが面白い感覚になるんだ。
観てるこっちからすると、この人スクリーンの中に出入りしちゃってるよ! みたいな面白さがあって…。ああ、伝わるかしらこれ。
しかも私は『裏窓』という映画を観ていて、その中でジェフは隣のアパートを観ている、で、その中でさらにそこを行き来しているリザを観ていると、私も入れんじゃないのか、この世界に…みたいな気分にもなってくる…。
ものすごく狭い世界の話だからこそ、視点や演出などなどの面白さがすごく光る。
『風とともに去りぬ』のような壮大さはこれぞまさに映画!! という感じだけど、こういう狭い中で凝らされた趣向ってのも私は大好きです。
とまあ、私はそんな楽しみ方をしてこの映画を観ていました。
みなさん、観たら感想を教えてほしいです。
あ、あとこのリザを演じているグレース・ケリーがただただ美しくって、とても快活で…惚れました。そういえば、グレース・ケリーの人生を描いた『グレース・オブ・モナコ』にもヒッチコック出てきてたな…といまさらながら思い出した次第。
次は、黒澤明の『用心棒』の予定です。
一気に日本へ…。
有里
余談。
このあと、『裏窓』の余韻に浸りたくてすぐに次の名作になかなか進めず、
あとそもそも映画を観るということにはまりだしているので、
名作と呼ぶには新しすぎるのでここには書かないけど、ほかにも映画を見てました。
この間観たのは『世界にひとつのプレイブック(Silver Linings Playbook)』 と『キャロル』。どちらもよかったよ。