今更会

今さら観ていない・読んでいないとは言いづらい映画・本を読む会

【用心棒】

名作映画を見る、と言っておいて、黒澤明を外すわけにはいかないでしょう。
黒澤明を観る、となると、私はどうしても気構えてしまいます。
私はっていうか…割とみんなそうなんじゃ……(小声)……え、ちがう…?
だってもはや彼は「伝説」として”すごい人””すごい作品”という認識だけはもう絶対あるじゃないですか。

好き嫌いの好みが分かれる〜とか、一部の映画ファンだけが強烈に好きな〜、とかじゃないじゃないですか。
それを私観て、面白くないって感じてしまったらどうしよ、映画のすごさとかわかんなかったら私って一体…みたいな気構えがありまして。。
いやはや。

 

で、今回「用心棒」を観た感想、一言。

…面白かった!

そう、面白かったんです。

で、この「面白い」というのは、映画としての出来の良さがどうこうで面白いとか、そんな小難しい意味での「面白い」ではなく、
つまりは”enjoy”とか”funny”とかっていう普通の意味での「面白かった」がまずもっての感想なんです。

お話として痛快だし、声に出して笑っちゃったところも割とあって、娯楽として実に楽しかったのです。
なので、黒澤明ってこんなに「面白い」んだ、って逆に感じてしまった。驚き。

「モノクロだ」とか、「世界のクロサワだ」とか、そういうことが邪魔してしまっていたんだと思うけど、でも、よく考えたら、大衆に受けてる映画なんだからそりゃそうだよね。

黒澤明の映画についてよく言われる「カメラワークが凄い」「映像美が凄い」「構図が凄い」など、そういうのにも注目しよう、と意気込んでたんだけど、いい意味で、それにとらわれずに普通に楽しんで愉快に観ることができたのは、とても良かったと思う。

とにかくね、色々気にせず楽しく観てほしい。面白かったんだ。

(一応、観なおしてみようと思って二回観たんですけど、構図とかカメラの動き方とか「わっ」と思うところはたくさんあります。映画を作る人がこれを参考にする、教科書みたいになってるの、わかる。そのあたりにももちろん是非注目ください。)

 

それから、どうしてもこれだけは書いておきたいのは、出てきてる人物がすんばらしい、ということ。

出てくる人出てくる人みんな、生きてる。

これは俳優のすばらしさでもあるし、その人じゃないとできないよねっていうキャスティングのすばらしさでもあるし、脚本のすばらしさでもあると思う。

ここで少しだけあらすじをいうと、ひとつの小さな宿場町の中で2派閥が激しく争っている、そこに三船敏郎演じる浪人がやってきて「俺を用心棒にしないか」と双方の派閥に自分を売り込んでゆき、波風立てまくってその争いを激化させていく…っていう話です。舞台はその宿場町の中だけなので、そんなにたくさんの人が出てこないのもあるけど、まあみんないいキャラばかり。

あの町と、そこに生きる人々が、観終わった今もなお、私の中で実際に存在する町や人のようになってしまっています。主人公含め、一人一人、強いだけでも弱いだけでもない。完全な善人でも完全な悪人でもない。「映画の中の人」ではなく、そこには「人間」が生きていました。

 

次回は、「ソフィーの選択」。

重いテーマを扱う作品ですが、アウシュヴィッツにまつわる映画を少し観たかったので。

 

有里